「批判・喧嘩」へ


エプソンよ、ユーザーの手間はタダだと思うのか






 エプソンのプリンタが故障したので修理に出したところどこもおかしくないという返事があった。よく調べてくれと念を押したにもかかわらず、故障が直っていないものを返してよこし、それに対して強い批判をしたが、無視された。以下はその顛末。
 「エプソン修理部のタコ加減に対する要望書」という文書は、1999年3月1日、エプソンの修理センター宛にファックスで送ったものである。
                  (以上、3月16日記)

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エプソン修理部のタコ加減に対する要望書

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 PM700Cというエプソンのプリンタを人に奨められて買ったのは2年程前だろうか。買ってしばらくは、ウインドウズ95の不具合に悩まされたおかげで、プリンタでプリントアウトするどころではなかった。ウインドウズ95のOSR2とかいうヴァージョンが載っている1000ドルパソコンに買い換えてから、不具合が頻発することが減った。最近になって、大量に印刷する用途ができたので、PM700Cで印刷しようとしたら、紙送りが正常でないのに気づいた。オートシートフィーダで数十頁を連続で印刷する用途に使ってみたところ、バネがはねるような異音がしたり、紙を斜めにくわえこんだりする。調子のいいときは、20枚程度は問題なく刷るが、途中で突然、紙が斜めにくわえこまれるという現象が出て、一度それが出るとしばらく頻発する。故障に違いないと思っていると、翌日はまともにまた20枚程度を連続印刷できたりする。

 長野のT−ZONEに電話した。持ってきてくれということだったので、自分でT−ZONEに持ち込んで、不具合を説明した。

 二、三日して、T−ZONEから電話があった。エプソンの修理部から連絡があったが、どこもおかしくないと言っているという。そんなはずはない。おかしいから修理に出したのに、どこもおかしくないというのなら、修理済みのものとして受け取るわけにはいかないと返事をする。T−ZONEの担当者は、その旨エプソンに連絡すると言う。それからまた数日待った。何の連絡もない。長野に用事ができたので、長野に行ったついでにT−ZONEに寄って、担当の人に会う。エプソンから連絡がないということだった。

 それならいい。

 エプソンが修理が終わったと言っているのなら、プリンタを受け取ると返事をしてくれとT−ZONEの担当の人に頼んだ。ただし、こちらが使っていて変だから修理に出したのに、どこもおかしくないというような返事は信用できないから、受け取った後で同じ不具合が出た場合は、同程度のプリンタの新品に交換するという条件で受け取ると伝えてくれと申し出た。その旨、エプソンに伝えるという返事を得て帰宅した。
 以前にこれと同じことがあった。富士通のオアシスという機械で、不具合が出るので修理に出すことを4、5回繰り返したことがある。どこもおかしくないという返事とともに機械が返ってくるが、使っているうちにまた同じ現象が出る。仕事で使っている機械なのだ。これで仕事になるかと腹をたてて、販売店を強く怒ったら販売店の人が新品を持ってきてこれで勘弁してくれと言うから、新品を受け取った。これも本来販売店に怒るべきことではない。富士通の修理部に怒るべきことだったが、富士通と直接話ができないので販売店に怒ってしまった。修理部がタコだと、販売店もユーザーも迷惑するのだ。修理に出して、どこもおかしくないという返事には、俺は神経質になる。

 それが木曜日だったか、金曜日だったか。土日をはさんで月曜日だったように覚えているが、T−ZONEから電話があった。修理品を受け取ってから同じ不具合が出たら、同程度の新品に交換するという条件をエプソンが呑んだということだった。T−ZONEの担当者の言うことによると、そういう条件を呑んだのは、エプソンとしても自信があるからでしょうということだった。

 それからまた一週間近く待った。

 今日、1999年2月26日、T−ZONEから、プリンタが返されてきているという電話をもらって、長野まで取りに行った。更埴市から長野まで、プリンタ一台のために3往復目である。プリンタを受け取り、帰宅してすぐにパソコンにつないで印刷してみる。

 同じ不具合が出る。

 T−ZONEに電話する。担当者の住居が俺の住所の近くなので、仕事が終わったらプリンタの不具合を見に来てくれるということになる。担当者が家に来たとき、ちょうどまた給紙の不具合が起こったところだった。確かに変ですねと担当者が言った。机が水平でないせいかもしれないと思い、建築現場から水平器を持って来て調べるつもりだと言うと、T−ZONEの担当者は、水平器を使って水平を出すことまでは、普通はやらないですよと言って帰った。

 合板と水平器を建築現場にとりにいく前に、友人に電話してプリンタを貸してもらうことにした。友人はPM700Cというまったく同じプリンタを持っているので、そのプリンタを借りて交互に接続してみれば、プリンタ側の問題なのか、プリンタドライバやウインドウズのタコ加減のせいなのかをはっきりさせることができる。友人は夕飯が終わってから、プリンタを持ってきてくれることになっていた。

 その電話をした後は、調子よくプリントしている。この時点では、まだ水平器を使わず、目で水平を見ただけである。しかし、調子よく印刷している。まずかったか。水平が狂っていたせいか、と忸怩たる思いになる。悪かったのは俺の方で、プリンタのせいじゃないみたいだから、プリンタを貸してもらうためにわざわざ来てもらう必要はないみたいだと友人に電話しようとしたとき、また紙が斜めにくわえ込まれていくのを目撃した。やはり直っていない。

 俺は自宅を自作していて、現場には水平器がある。車を飛ばし、水平器をとりにいったのは、どの程度の水平が必要なのかつきとめてやろうと思ったからだ。水平器をぶらさげて家に入ると、友人がすでに到着していて、印刷を試していてくれた。バンという大きな異音が出ること、紙が斜めにくわえこまれていくことは、二つとも、俺が建築現場から自宅に戻るまでの間に、友人も確認したと言う。しかし、持ってきた水平器できちんと水平を出したら、その後はまったく正常にプリントする。やはり、俺が悪かったのかと思う。友人も水平が出ていなかったせいだろうと言う。夜、10時前から12時頃まで調べるが、不具合が出ない。1時近く、友人が帰る。

 その後、友人のプリンタで60枚ほど連続印刷するが、一枚もミスがなく刷れる。この機械は問題ないと思い、また自分の機械をつないで印刷させた。2枚目で紙が斜めにくわえこまれ、ぐしゃぐしゃになった紙が排紙され、紙がないという見当違いのエラーメッセージになり、プリンタが止まる。水平器で測った正確に水平な状態でそれが再現した。水平は関係ない。水平な状態で、修理に出す前とそっくり同じ不具合が出る。
 修理に出したプリンタが修理されていないまま返ってきたのだろう。その後、友人のプリンタをもう一度つなぎ、まったく同じ条件で印刷させるが、このプリンタは何十枚刷っても問題なく印刷する。つなぎ変えて、自分のプリンタに変えたら、すぐに紙が斜めにくわえこまれた。やっと、自分のプリンタだけがおかしいことが判明した。OSやドライバのせいではない。

 このプリンタが始末におえないのは、ごきげんがいいときはまったく普通にプリントしているというところだ。しかし、突然おかしくなる。一度おかしくなると、トラブルが頻発し、仕事にならない。しばらくすると普通に戻る。たちの悪いプリンタだ。エプソンに修理に出しておいた間は、エプソンという実家に帰って、いい子の顔をしていたのだろう。

 機械が故障するのは、当然あることだ。しかし、修理に出しても、何の問題もないという返事が返ってきた時、俺は用心した。

 機械が故障することでは腹はたたない。修理に出して、何の問題もないという返事があったので、そんなはずはないからもう一度よく調べてくれというこちらの申し出に何日も返事を寄こさなかったり、そうして念を押して修理を頼んだにもかかわらず、返ってきたものが修理に出す前と同じ不具合を起こすこと、これに腹がたつのだ。エプソンの修理部は、ポイントの外れたところの部品をいくつも交換し、その代金を俺に請求したが、肝心の不具合は直してない。

 エプソンの修理部の技術力のなさに腹がたつ。こちらもやるべき仕事が連続しているのに、それを中断させて修理に出しているのだ。プリンタ一台のために、更埴市から長野市まで片道30〜40分の道のりを3往復している。それで、故障がなおっていないまま品物が返ってきた。修理代は4800円余りとられた。なおっていない品物に修理代を出させられたことになる。

 約束通り、同程度の新品に交換してもらうつもりだ。新品なんかもらってもうれしくない。いまどきのチャチなプリンタなんか、ユーザーが自分で負担している今回の手間に相当しない。馬鹿野郎、新品がもらえてうれしいや、と何度も自分のプリンタをいじりながらののしった。

 これが宝石を買うとかいうことだったら納得できる。品質のよくない宝石を高い値段で買ったとしても、それはその品物を自分の目で見て、納得したうえで金を払ったのだから、劣悪な品質の宝石を高く買ったのでも、俺は文句は言わない。

 コンピュータ回りの品物はそうじゃない。プリンタならプリンタの正常な性能に対して俺は金を払ったのであり、プリンタのプラスチックのケースとかヘッドとかモーターとかに金を払ったのではない。あくまで、正常な動作、正常な性能に対して金を払ったのだ。故障しているから直して欲しいという要望に対して、修理の対価を払わせておいて、修理を依頼する前と同じことが再現するのでは、俺はいったい何に対して金を払ったことになるのか。

 エプソンよ。俺は長いことエプソンのファンだったのだ。CPUが286の頃、エプソンがNECにMS−DOSにガードをかけられて、そのガードを解除するためのプログラムを無料で配布していた頃から、俺はエプソンのユーザーだ。286の機械、それにつなげるAP−800というプリンタ、20メガバイトのSASIのハードディスク、386のノートパソコン、486の中古パソコンまで、みんなエプソンで揃えた。エプソンがNECにいじめられている間は、絶対にNECの品物は買わない、みんなエプソンで揃えようと決めて、その通りに買った。20ギガバイトじゃないよ、20メガバイトのハードディスクを12万円出して買ったのも俺だ。最近では、GT5000という名だったか、スキャナもエプソン、それからこのトラブル続きのPM700Cもエプソンだ。エプソンよ、俺はかなりの金をすでにエプソン製品に使っている。70万〜80万の金は俺のふところからエプソンに渡っているのだ。そういうユーザーに、今になってこの仕打ちか。

 要望は次の通りである。

 もう修理していただく必要はない。

 同程度、あるいは同程度以上の新品に交換していただく。梱包を開いて動作確認を厳重に行っていただいてから渡していただく。

 修理代は返していただいても、返していただかなくてもいい。
 修理代を返していただけない場合は、俺が費やした無駄な手間に対していくら払っていただけるのか連絡をしていただく。

 修理代を返していただく場合も、俺が費やした無駄な手間に対する代価はどうなるのか連絡をいただく。修理済みだとして返ってきた機械が故障したままだということを、10時間以上もかけてみつけたのは俺なのだ。

 俺は英語塾をやっており、プリンタがないおかげで仕事が2週間程度ストップした。修理に必要な日数に対しては文句は言わない。しかし、おかしな動作をする品物に対して、どこも問題がないという返事を寄こしたこと。それに対し、そんなはずはないからよく調べてもらうようにとこちらが要望したことに対し、数日間何の連絡もなかったこと。その数日間に俺の側に生じた損失に対し、いくら払っていただけるのか連絡をしていただく。

 友人に借りたPM700Cは、俺の機械と交互につなぎなおす作業によってかなりのインクをテストのために使用した。こんなテストは本来なら、エプソンの修理部が行うべきものである。友人がプリンタを持ってきてくれてから、朝の3時まで6時間。T−ZONEから帰って、パソコンにつないでからなら、10時間以上の時間がかかった。6時間かかろうが、10時間かかろうが、これは本来エプソンの修理部が行うべき作業である。

 友人のプリンタのインクの消耗については、PM700C用のインクをカラー、黒とも無料でこちらに渡していただく。

 俺は、品物を買ったのであると同時に、その品物が備える機能をも買ったのだ。機能を買ったにもかかわらず、機能しない。機能しないとこちらが念を押したにもかかわらず、機能しないまま修理済みとして品物を返して寄こす。エプソン修理部のこの根性が許せない。

 俺としては、同程度あるいは同程度以上の新品のプリンタに交換してもらっても、まだ腹の虫がおさまらない。無駄な手間をどうしてユーザーに費やさせるのか。エプソンはユーザーの手間はタダだとでも思っているのか。これに対しては、文書で回答していただく。

 ちなみに、この文書は、MS−DOSを載せたエプソン386NOTE・Aという昔のエプソンのノートパソコンで書いた。この機械は、酷使しつづけているが、まだ何の不具合も起こさない。この機械を作っていた頃のエプソンという会社を俺は信用する。286のデスクトップにせよ、386のノートパソコンにせよ、どれほど世話になったかしれないと思う。ずいぶん昔に感じるが、これらの機械につないで働かせてきたAP−800も健在で、ときどきはこれで印刷する。この頃のエプソンの品物はいい。しかし、PM700Cが爆発的に売れた頃からのエプソンには、俺ははっきりと疑いを持っている。品物の質が劣化している。安ければいいというものではない。違いますか。

以上。

                            根石吉久

             (以上を3月1日にエプソンにファックス)
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 この文書に対して、エプソンは10日間、無視を続けた。10日目にこちらからT−ZONEの担当者に電話。こちらを無視する修理センターを、こちらも相手にする気はないこと、プリンタをダンボール箱に入れて、エプソンの社長室宛に送りつけること、その際、それまでのいきさつを文書にして同封すること、などをエプソンの修理センターに伝えてくれと言った。T−ZONEがエプソン修理センターに、その旨を伝えて以後、T−ZONEにエプソンからやたらに電話がかかるようになった。途中、何度もT−ZONEの担当者に、もう間に立つことはやってもらわなくてもいい、これじゃ、T−ZONEに迷惑がかかる。エプソンからじかに俺に電話するように言ってくれと伝えるが、エプソンはその後もやたらにT−ZONEに電話をした。T−ZONEの担当の人には、非常に迷惑をかけた。ここにそれをお詫びしたい。
 以下の文書は、エプソン修理部から10日間無視され続けた後に、プリンタ本体を、セイコーエプソン株式会社の社長室宛に送ったときに、プリンタに同封した手紙である。

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しらばくれるエプソン修理部

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 エプソンに苦情のファックスを送ってから10日たったが、何の連絡も寄こさないので、今日、1999年3月10日、T−ZONEに電話した。ファックスが届いているかどうか確認できないかと言ったところ、エプソンの担当の者が、ファックスを読んだと数日前に言っていたとのことだった。

 最初に苦情のファックスをエプソンに送ってから10日も無視され続けてきたので、俺はもうT−ZONEを通じてエプソンとやりとりする気はないこと。そんなことをやっていたら、俺だけじゃなく、T−ZONEに大きな迷惑になること。こちらを無視するエプソン修理部を、俺はもう相手にする気がないこと。ダンボール箱にプリンタを詰めて、最初にファックスした文書と、新しく書く文書(この文書)を同封の上、エプソンの社長室に送りつけること。この二つの文書は、インターネット上のホームページに掲載し続けること。それらを、T−ZONEの人に伝えて電話を切った。

 二度とエプソン製品を買わないことを決意した。

 そう伝えて電話を切ってまもなく、T-ZONEから電話があった。エプソン修理部が、もう一度ファックスを送ってくれと言っているとのことだった。それは、エプソンの修理部が俺が最初に送ったファックスをなくしたということか、とT−ZONEの人に聞いたところ、さあ、その辺はわかりませんがということだった。

 10日前にファックスしたものを再度エプソン修理部にファックスする。

 以上までが、1999年3月10日までの経過である。
 以下、エプソンの社長に対する質問状を添付することにする。

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エプソンの社長様



 おたくの修理部には誠意がありません。

 同封のもう一つの文書をお読みいただけば、この一ヶ月近くの間に起こったことはおわかりいただけると思います。修理に出して、修理代をとられ、直っていないものを返されました。その苦情をファックスした後、長く無視されてきました。
 その間、私とエプソン修理部の間に立っていただいたT−ZONEの担当の方には、もう間に立っていただく必要はないこと。私が直接に、エプソンの社長室にダンボール箱に入れたプリンタを送りつけることを伝えました。 同封されているものがそのプリンタです。

 これらの文書は、インターネット上の私のホームページに掲載し続けることを、今日決意しました。二度とエプソン製品を買わないことも決意しました。

 しかし、PM700Cについてはまだ問題が解決していません。修理に出して直っていない問題ひとつでこんなに手間どるのなら、キャノンなりどこなりのPM700C相当の品物を買って、PM700Cを地面に叩きつけて壊した方が、手間を考えればはるかに安くついたとは思います。
 しかし、「物」に対してそういうことができずに、あくまでエプソンのプリンタの問題をエプソンに解決させようとしている自分の律儀さには、我ながらあきれております。しかし、これが筋だと考えます。

 別の文書にもありますが、機械が故障することに対して腹をたてているのではありません。故障しているものを修理に出して、どこもおかしくないと言われた時点でもまだ腹はたちませんでした。用心しただけです。

 確かに変だからしっかり調べてもらうようにと念を押したにもかかわらず、直っていないものが返ってきたときに、私は腹をたてました。その旨をファックスで、修理部に苦情を言ったところ、10日たっても何の連絡もありませんでした。修理部はユーザーの苦情を放置したのです。この時点で、私の怒りは修復できないものになりました。

 修理部の誠意のなさに対して、エプソンの社長としてどうお考えになるのか、文書でお答えくださるようお願いいたします。なお、その文書はインターネット上の私のホームページに掲載することをあらかじめお断りしておきます。


                          根石吉久

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 以上の文書を、着払いで、エプソンの社長室宛にプリンタと一緒に送ったところ、T−ZONEにやたらに電話がかかるようになった。T−ZONEの担当者には、とにかく中に立つのをやめてくれとお願いする。T−ZONEにとってはひたすら迷惑なだけである。しかし、担当者は、エプソンから電話があるたびに私に連絡をくれた。申し訳ないと何度も思った。しかし、エプソンとの喧嘩をやめる気もなかった。とにかく、エプソンにじかに俺に電話すればいいと伝えてくれと、T−ZONEの担当者には二度、三度と言った。
 3日ほど前、ようやくエプソンの修理センターからから電話があった。
 私が、社長室宛にプリンタと文書を送ったことを言うと、
 「どこの会社もそうだと思うんですが、ああいうふうに社長室宛に品物を送っても、社長室まで届かないのが普通です」
 とエプソン修理センターの人は言った。
 「ああ、そうでしょうかね。それは、秘書かなんかが開封して、文書も読んで、社長室まで届くのをストップしちゃうんでしょうか。だったとしたら、その秘書の判断が問題ですね。私は、あの問題は社長が知っておくべき問題だと思っています」
 そう答えた。
 プリンタと文書は、修理センターの方へ回されてきているという。
 「社長のところに届いていないんだったら、もう一度、『親展』と表書きして社長宛に文書を送ってもいいです」
 と言ったところ、エプソン修理センターの人はしばらく黙っていた。
 修理センターが、ユーザーが念をおした箇所に対してプリンタ一台の修理ができない問題は、社長が知っていていいことではないのか。ユーザーの苦情を放置する体質がエプソンの修理センターに生まれてきているのなら、それはエプソンという会社全体にとって、大きな問題ではないのか。
 修理センターの人は、とにかく設置にうかがいたいと言う。普通、プリンタを修理に出して、ごたごたが起こったとしても、設置までしにくるものだろうか。問題は設置にあるのではない。プリンタが故障していて、それが直せないこと、それに対して苦情を言っているのに、無視し放置したこと、それが問題なのだ。お会いしてお詫びしたいと言うから、こちらも余計な手間を使って文書を書いたのだから、修理センターもちゃんと文書を書いて返答するのが筋だと答える。ファックスで文書を送ることを、エプソン修理センターがようやく呑んだ。

 今日、3月16日、エプソン修理センターの女の人から電話があった。これからファックスを送るという。ファックスが届いてから、宮坂さんという人から電話がある。ファックスが届いているかと聞かれる。届いたこと、これから読むこと、読んでから電話すると答える。
 宮坂さんか、と思った。
 私の隣の家も宮坂さんだ。旦那さんの名前は宮坂貞雄さんというんだが、先日なくなった。私はこの人に非常に世話になった。ぶっきらぼうだが、若い人を育てるのが好きな人だった。ご先祖はお諏訪さんの信仰と一緒に諏訪の方から来たんじゃないかと思っている。エプソンの本拠地も諏訪だ。そうか、宮坂さんかと思った。
 PM700Cの故障をエプソンが直せなかったこと、それに対する苦情を放置したこと、そのこととエプソン修理センターに宮坂さんがいることとは、まあ何の関係もない。

でも、エプソンの宮坂さんと、私の家の隣の貞雄さんとが話し方がそっくりなのだ。亡くなった貞雄さんと話しているような錯覚が起こって困った。ぶっきらぼうで、口がうまくないところがそっくりなのだ。貞雄さんは、気が強くて、ぶっきらぼうなんだが、正直で、悪さをしてもすぐにバレてしまうような人だった。
 まずい、貞雄さんだと俺は思った。

 エプソンの修理センターから届いた文書は以下の通り。

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 根石吉久様

              ’99年3月16日
              エプソンサービス(株)
              エプソン修理センター
              TEL & FAXナンバー
              企画・総務グループ
       (個人の姓のハンコが押してあるがファックスの
        ため判読できない)

 件名:MP−700Cの不具合に対するご報告の件

拝啓。時下益々ご清祥の事とお慶び申し上げます。平素は弊社製品をご愛顧賜り厚く御礼申し上げます。この度は、プリンタ不具合の発生により多大なるご迷惑並びにお手数をお掛け致しました点、誠に申し訳なく深くお詫び申し上げます。
さて、先日根石様よりご送付頂きましたFAXを拝読し、修理完了後の根石様の費やされた労力、お仕事への影響などの事実等を知り、一つ一つがごもっともな内容と受け止めた次第でございます。
弊社内部へはお客様の立場に立った修理作業をすると共に、電話/FAX情報管理を再度徹底しましたのでご理解の程お願い申し上げます。
弊社としましては、お客様を通じより信頼される製品作りに努めてまいる所存ですので、今後ともご愛顧の程お願い申し上げます。
                            敬具

             −記−

 1.経過報告
   (1)初回のお見積もり(2/28)の後、T−ZONE様からご
      連絡を受け通紙テスト50枚を実施しましたがご指摘の不具
      合の再現をすることができませんでした。さらに、送品時
      (2/23)にも再度給紙テスト50枚を実施しましたが同
      様でした。
   (2)3/1に根石様からご送付いただきましたFAXにつきまし
      て、T−ZONE様が弊社にFAX着信した事を電話で確認
      したとの事ですが、その時の弊社対応者を調査しましたが不
      明であり、すでに着信記録は廃棄済みでした。
      通常、もしこのようなお客様からの重要なFAXが届いた場
      合、即責任者に回し対応するのが常ですが上述の通り、なぜ
      根石様からのFAXを受け取れなかったかは不明です。(今
      回はFAXに何らかの異常が発生していたのではないかと推
      測いたします)

      その他、詳細いきさつ等につきましては別紙をご参照下さい。
   
 2.不具合再現結果について(3/12,13実施)
      先日、根石様よりご送付頂きましたプリンタの再現性確認を
      行いました結果、最初はすぐに再現せず、何回かトライして
      再現できました。
      不具合は、給紙装置内のバネ形状不具合により左右の給紙バ
      ランスが崩れた為に発生しておりました。

       プリンタ受取後のテスト結果
          A4普通紙連続50枚給紙テスト
          スキュー(左下がり)及び紙ジャム発生8/50

       不具合部品(バネ)を新品部品に交換後のテスト結果
          A4普通紙連続50枚給紙テスト(2回実施)
          スキュー発生なし。 0/100

       上記の結果、弊社修理担当の確認が充分でなかったことが
       判明致しました。

 3.今後の取り組みについて
      なぜバネ形状不具合が発生したのか真の要因は不明ですが、
      今までに例がなく突発的な部品不良であり傾向的不具合では
      ないと考えます。今回、再現性が低い為に修理時に発見でき
      ませんでしたが、今後は通紙検査枚数を増やす等により、検
      出力をアップする事を検討しております。
      根石様のお怒りに対しては金銭面で解決できる内容ではない
      と思いますが、今回の修理代金につきましては、当方の修理
      不完全で発生したものであり、T−ZONE様経由でお返し
      したいと思います。尚、その他ご要望がありましたら、T−
      ZONE様経由又は直接当社迄お申しつけ願えれば幸いです。
      また、ご報告と新品代替につきましては、近日中に訪問させ
      て頂きたいと存じますので、訪問日時をご連絡いただければ
      幸いです。
      ご連絡は宮坂又は五月日(上記TEL又はFAX)迄お願い
      致します。

      (PM700C新品在庫がありませんので、PM770Cに
       交換設置いたします)
                              以上

     追伸:ご友人にまで大変ご迷惑をお掛けし申し訳ありません
        でした。ご友人のPM−700Cでご使用されたイン
        クカートリッジも持参させていただきます。

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根石様PM700C不具合発生後の対応いきさつ 99.3.16

・・・・・これは表にしてくれてあるが、ここで表を作るのが面倒なの
     で、「エプソン内経過内容」を「エプソン」、「T−ZON
     E様のご対応」を「T」に、「根石様のご指摘及びご対応」
     を「根石」にして、列記するにとどめる。

・根石 T-Zに持ち込み
・2/17 エプソン 修理受付
・18 エプソン 修理完了 一回目見積もりFAX送付(不具合なし)
 T−Zから根石様にTEL(どこもおかしくない)
・根石 T−Zにおかしいので修理に出した、受け取れないと返事。
・T (ESKの見積もりFAXを見て?)ESK千代にTEL
・エプソン 修理担当者は異音・紙送り良く見てくれと指示(F工場に)。
  (50枚通紙テスト指示)
・根石 ? 数日待ったが連絡なし。T−ZONEに立ち寄り。
・T エプソンから連絡無しと根石様にお話する
・根石 エプソンが修理が終わっていると言うなら受け取る、
    受け取った後不具合が出たら同程度のプリンタ交換す
    る条件で受け取ると伝えてくれ(T−Zに依頼)
・22 根石 ? 修理品を受け取ってから同じ不具合が出たら同程
    の新品と交換すると言う条件をエプソンが呑んだ。T−Zか
    ら電話。
・23 エプソン T−Zから高林宛TEL「ヘッドは替えなくてO
    K」 
    印字テスト指示。F工場に(50枚)
    2回目見積もりFAX送付。
・24 エプソン 修理完了品送品
・26 根石 修理品受け取り印字。不具合発生。T−ZONEへ
    TEL。
    T 風間様根石様宅で不具合現象確認、後帰宅
・27   根石 不具合発生後10時間不良解析
3/1 根石 エプソンにFAX送付
    T  根石様からFAXが届いたらTELするように高林
       に依頼
    エプソン FAX未着(FAXを待っていた)
(日付なし) 根石 T−ZにFAXがとどいたか聞いたところ、
          数日前に読んだと言っている
       T  エプソンの誰か?わからないがFAX確認した
       エプソン エプソンにはFAX未着。
3/10 T T−ZONE様から高林にFAX見ましたかとTEL。
     エプソン T−ZONE様にFAXきていません
     エプソン T−ZONE様に根石様からFAX送付依頼。
          2回目。
     T 根石様に再度エプソンにFAX送付依頼。
     根石 FAX送付。
     エプソン FAX受信
3/11 エプソン PM770Cに新品交換をT−Zに打診
3/12 T−Zに3/15訪問約束。その後根石様宅訪問依頼TEL。

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 以上が今日、エプソンから来たファックスである。
 読み終わり、企画・総務グループというところへ電話。宮坂さんにつないでもらう。
 3月1日に私が送ったFAXについて、エプソン側がなぜ受け取れなかったのか不明だとしていること、それをFAX機のせいにしているのは納得できないことを言った。
 3月1日の私のファックスがエプソンに届いていないことにできれば、エプソンは10日間ユーザーの苦情を放置したわけではないと主張できるし、そうしたがっているのだろうというのが私が考えたことだ。
 もし、3月1日のファックスがエプソンに届いていなかったのなら、3月10日に、私がT−ZONEの担当者にエプソンにFAXが届いているかどうか確認できないかと聞いたとき、担当者が、「エプソンの人が数日前に読んだと言っている」と言ったことは嘘になる。エプソンの人間が嘘を言ったか、T−ZONE担当者が嘘を言ったことになる。私は、これまでのいきさつで、T−ZONE担当者の金にもならない仕事に対する誠実な対応を知っている。そういう人が嘘を言っているようなことを示唆する発言は許せない。私は宮坂さんにそう言った。
 その時、宮坂さんが言ったことがあるがここには書かない。
 まるで貞雄さんだと思った。正直な人だ。
 謝るのが下手な人が一生懸命謝ってくれていた。
 いい人と話ができた。

 宮坂さんが困り果てているのがわかったのだ。

 本当に死んだ貞雄さんと話しているような気がした。
 おっしゃん、もうそのくれえにしといてやれや、と墓場から貞雄さんの声がしたような気がする。貞雄さんは、私よりも20歳も年上のくせに、いつも私をおっしゃん、おっしゃんと呼んだ。男が男を「おっしゃん」と呼ぶ時の、北信地方特有の親しみの感情は他の地域の人にわかるだろうか。これは普通、年上の男に対して使う言葉だが、貞雄さんは20歳近くも年下の私を、いつもおっしゃん、おっしゃんと呼んでかわいがってくれた。

 駄目だ。電話の向こうで貞雄さんが話しているんだ。どうしても俺の耳が貞雄さんの声を聞いてしまう。

 「対応のいきさつ」については、順序が違うところがある。私が社長室にプリンタを送り込んだことも、根石の対応の欄には書いてない。根石の欄にある「?」の意味もよくわからない。
 しかし、もういい。エプソンが、「弊社修理担当の確認が充分でなかったこと」を認めたのであれば。そうして、電話の向こうで、定年に近い年齢の男が一人、「申し訳なかった」と言っているのであれば。

 私の批判の言葉の矢面に立っているのは、10日しらばくれた男とは別の男なのだ。その男が、「申し訳なかった」と言っているのだ。

 これでやめる。

 夕方、T−ZONEから電話があった。
 昨日、T−ZONEで買ったサウンドカードをCD−ROMドライブにつなぐケーブルがないこと。そのプラグの形状について質問した。10BASE−Tをつなぐためのカード類、ケーブルを買いたいが、昨日の時点ではPCIスロットがあいているかどうかわからなかった。ケースをあけてみたら一つあいているから、近々、買うと話した。
「エプソンの件だけど」
 と私は言った。
「もう、終わりにする。諏訪や松本からわざわざ設置に来てもらうまでもない。納得したからもういい。エプソンには、いいおっしゃんがいる。今のエプソンを大きく育ててきた正直なおっしゃんがいる。もうやめる。これまでありがとうな」
 T−ZONEの担当者にそう言って電話を切った。





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