妻がひげおやじさんを相手にシナリオの『ボディ・ガード』を使ってレッスンしているが、テキストに piker という単語が出てきたそうだ。妻が『アンカー』という学習用の辞書で調べたが、pike という項目に「矛(ほこ)」「カワカマス」「有料道路料金徴収所」というのがみつかったが、piker は見つからなかったそうだ。
パソコンに入れてある「光の辞典」(講談社パックス英和辞典)で調べたら、pi´ker【pa´ikэγ】 [名]〈話〉用心深くけちな賭博師.
と出た。にらんでいるうちに、イメージの古層は「とがったもの」だろうと思った。だから、「矛」が古層にあるイメージによく重なる具体的イメージだろう。そして、きっと「カワカマス」は口の長くとがった魚だ。
この魚は、穴やものかげに隠れていて、目の前を通る小魚をとがった口を突きだして食う習性があるのではないだろうか。このイメージは、「有料道路料金徴収所」のイメージから逆算したものだ。イメージの(歴史的な)生成順序としては、当然「有料道路料金徴収所」が一番最後に来るだろうが、辞書はただ訳語を羅列するので、イメージを逆算することが語学では成立する。
魚の形状として口が「とがっている」が古いイメージだが、その魚の動作、つまり、泳いでいる魚を「横からとる」動作が、流れている車を止めて、「横から(金を)とる」「有料道路料金徴収所」のイメージと重なったのではないか。
piker が「用心深くけちな賭博師」となるのは、おそらく「カワカマス」が自分は身を隠してじっとしているくせに、ちょいちょい長い口を突きだして小さな利益(小魚)をとる動作から来ているのではないか。つまり、一見相互に繋がりがないように見える「矛(ほこ)」「カワカマス」「有料道路料金徴収所」は、「とがったもの」というイメージが、「カワカマス」の「習性」のイメージに変質した時期があるのだろうと見れば、イメージの変容過程として脈絡がつく。
すべては推察にすぎない。何の証拠もない。
私は「カワカマス」という魚を見たことがないし・・・。
しかし、pike と piker に付されたいくつかの日本語の単語をにらんでいると、「カワカマス」がどんな形の魚なのか、どんな習性を持つのかが想像できる。間違ってしまうかもしれないおそれはいつもあるが、この想像や推察自体は楽しい。
イギリス(あるいはアメリカ?)にいる「カワカマス」がどんな魚かご存知の方がおれらたら、私の想像がどの程度あたっているかお教え下さい。この種の想像や推察は、私が小学館文庫で書いた主張、「いちいちの日本語の訳語を覚えるな、核となるイメージをつかめ」に照応します。「核となるイメージ」を持っていればさまざまに応用がききます。いちいちの訳語を覚えようとする人は、いちいち英語を日本語に置き換える癖がつきます。ここのところは、実は大事な大事なポイントなのです。たまたま妻が piker のことを言い出したので、今日は「カワカマス」さんに登場していただき、「核とな
るイメージ」とは実際にどんなものかを書きました。
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