自宅自作日録1998年3月
980305
昨日とうって変わって寒い。クリークへ行く。珍しく宮崎さんがいた。便所の臭気抜きをどう作るかを相談する。もう10年近く前に埋めてもらった便槽から1階の便器までつながっている塩ビのパイプの途中に臭気抜きのパイプがつなげられるようになっているはずだと宮崎さんは言うが、現場にそのようなものは見当たらない。簡易水洗だと、自然風を使った臭気抜きでは空気の引きが弱くて駄目だそうだ。常時ファンを回して臭気を抜くのが普通のやり方だと聞き、そうすることにする。臭気抜きのパイプが土に埋まっているかどうか調べるため土を掘る。冷たい雨が降るので、軒で雨をよけながら掘っているうちに、臭気抜き用のパイプが処理されているのをみつける。ひと安心。2階の便所にそれ専用の臭気抜きを作らなければ駄目だと、昨夜松谷さんが言いだし、そのことで2時間ほども議論したが、その必要はないとのこと。閉じられたパイプの全長に対し一つの臭気抜きがあればいいとわかる。
塾で焚いた薪ストーブの暖気を、塾終了後に寝室へ引くためのファンを松谷さんが寝室の壁に施工してくれてあった。中村から買ったピタパネとかいう製品を風の向きが逆になるようにとりつけたもの。試運転してみるが大した空気の量が動くわけではない。しかし、これをベッドの下に送風すれば効果はあるだろう。
松谷さんが便所の細かい造作をやる間、断熱材・スタイロフォームの施工をする。屋根の傾斜と峰近くの水平材とのとりあい部分は、断熱材を細かく切る手数が多くなかなか進まない。
屋根の傾斜どおりに貼っていく天井材が峰近くで水平材とぶつかるところで、合板と合板が出会うが、そこの見切りをツーバイフォーでやると俺が言い出したところで、松谷さんが6分の角材を使うとか、4寸の間柱を半分にひき割ったものを使うとか言うので、ツーバイフォーでいいのだと言い張る。通常の在来工法の空間構成なら松谷さんの言うとおりでいいのだが、吹き抜けがあるうえ、2階の床から見上げても3メートル50以上の高さにその見切りがつくわけだから、やたらに細い線のようなものを使う必要はない。松谷さんは、ログハウス・ビルダーをやっていた人だが、室内の造作のことになると在来工法の大工の感覚と同じものを強くもっていて、俺が「ざっくり」したものを作るのだとか、「ごつごつ」したものにするのだと言っても、なかなか承知しない。
終日雨。夜10時終わりにする。
-----------------------------------------
3月11日
(13日に記録)こまごましたことをやっているので、記録しないとすぐにどんどん忘れていく。
昼間、塩沢が来てケンタッキーのフライドチキンを差し入れしてくれる。天窓の光を1階の通路に落とすために木で筒を作り始める。二階のスタイロフォームとグラスウールで施工した部分を壊してやりなおさないと、この筒に屋根の重量を負担させることができないことがわかり、スタイロフォームとグラスウールで成形したものを壊す。
この部分は手間を食った部分で、壊しながら非常にくやしい。これを壊し、わずかに木をとりつけることしかできなかった。
松谷さんが床の上でしている造作はいずれ、屋根ととりあう。このとりあう部分の下準備を俺がやっているわけだが、松谷さんは、自分が今やっていること以外に関心をもたない。自分のやっていることが次にどこにどう接続していくかを考慮に入れないので、どこをどうするかということを話し合って決めても、すぐにそれを忘れ、自分が思い込んでいた考えに戻ってしまい、それで勝手に施工してしまうことがある。この日も、2階のトイレの部屋からの臭気抜きのダクトが通る場所を、ダクトのことを考えずに施工を進めてしまい、ダクトは書斎の天井際を走るものだと思っていたと言う。冗談じゃない。ダクトが走っていく方角が南と北じゃ正反対だ。書斎の天井際を走らせる案は臭気抜きのダクトのことを話し合う途中で確かに出たが、結論は桁に沿わせて南の壁から抜くというものだった。結論を放ったらかしにされ、途中で出た案で施工されてしまう。施工の途中で気づいたからよかったものの、そうでなかったら後からどうにもならないというような場面がある。まあ、図面なしで作っている俺も悪いのだが・・・。
断熱材の施工はあまりに雑で松谷さんにまかせられない。木の施工は上手なのでそれをやってもらう。困るのは、全体を把握して先の段取りを考えることはやってくれないことだ。この仕事の先は上に伸びていった場合、どこにどう接続するのか等、聞いてくれればいいが、自分の考えで勝手にやっていくので、上でやっている仕事と床でやっている仕事がちぐはぐになる。
これらのことを苦情として松谷さんに言う。全体を考える者と、部分を考える者との間に密な情報の行き来がなければならないのだが、なかなかそれが成り立たない。
わかったと松谷さんが言ってくれたので、一緒に昇龍園へ行き飯を食う。
-----------------------------------------
3月19日
しばらく記録しなかった。
現場へ行く前に峰村材木屋へ。針葉樹合版18枚買う。ついでに、ドアや戸を作るための集成材のことをたずねる。ペルポックパインという木の集成材が一番安いとのことだが、それでも集成材は高い。フレキシブルボードの実物を見れないかと言うと、注文があればとりよせることはできるが、在庫はないとのこと。
峰村で針葉樹合版を積み、カインズホームでツーバイフォー10本、ツーバイエイト1本、アルミテープを買う。
現場で針葉樹合版の天井板を松谷さんと張る。これはどうにも一人ではできない。壁も針葉樹合版だし、天井も針葉樹合版。節抜けもけっこうあるので、後でポンチで釘を深めに打ち込み、木工用ボンドと鋸屑を混ぜたものをパテにして釘の穴などを埋めることにした。これは女房に頼んでこまめにやってもらうしかないだろう。
松屋さんに、現場を10日ほど休みにすることを話す。小学館の文庫の仕事をこの10日間に骨ぐみだけはやってしまうつもりだ。
妻がトーエネックは来ないねと言う。後から出る苦情というものが施工した者にいやなものだとはわかるが、だからといって放ったらかしにするのなら、その業者に誠意はないということだ。一部上場企業がこれからどうするのか見ているつもり。
-----------------------------------------
3月20日
小学館の仕事をしていて、現場着は午後3時。二階のトイレの電気の配線をしようとして、センサー付きのライトをつけるという松谷さんのアイディアを採用。本久へ。2900円余のものを買う。コンセント二口のものと一口のもの、ひとつづつ。カインズでクッションフロアを見て、気に入らず買わなかったが、本久にまあまあのものがあったので買う。現場に戻り、臭気抜きのファンをとりつけるには先にアルミのダクトを施工する必要があることがわかり、松谷さんとやる。100ミリの塩ビパイプとアルミダクトの接合はアルミテープをぐるぐると巻き付けた。このダクトが南の壁を抜ける部分で少し高さを下げないとツーバイフォー材を切ることになるので、南の壁の棚の中に収めることにする。松谷さんがアルミのダクトを施工している間に、二階トイレの電気の配線をする。トイレのドアの上の小壁に結線部分を収める。VA線をあらわしで配線したが気に入らない。塗料で着色すべきだったかと思う。壁に垂直に配線される部分だけでも着色しようかと思う。明日から10日間、現場は休み。